銀座 高橋洋服店

Essay

第37回 ビジネスウェアーのカジュアルダウン

2023.09.27

2005年に始まった「クールビズ」でスーツ一辺倒であったビジネスウェアーに大混乱が始まりました。
この時の大きな問題は、スーツを脱いだ後のルール作りをしないまま、ただ室温28℃でも快適に仕事に臨める服装、としただけだったためビジネスパーソン達の間に大混乱が起きました。勿論簡単な指針は出されていたのですがそれはそれは奇妙奇天烈なものだったのを記憶しています。

そしてCOVID-19が蔓延で職場では在宅勤務という防衛策がとられ、多くのビジネスパーソンは自宅で仕事や会議に臨むことになったのですが、なぜか在宅会議に臨むにあたっては “スーツ(風)でないと…” と考えた人々が多かったようです。
画面に映る上半身はジャケットにネクタイ、見えない下半身は部屋着のジャージのまま、という珍妙なスタイルで会議に臨んでいた人も多かったとか。その需要に合わせてどこかのロードサイドショップが “パジャマスーツ”なる珍妙なものを考案したのです。
年間を通じて必ずしもスーツにネクタイでの出社を必要としない、というメガバンクの宣言の時期と前後していたように記憶していますが、ビジネス界には確実にスーツ離れの潮流が押し寄せている一方で、スーツには未だある種の神通力があることだけは間違いないと思います。

では出社に当たって何を着てゆくか、という問題を考えた時、内勤で来客予定が無い時ならば、あまりカジュアル過ぎない格好ならば何を着ていても問題は無いと思いますが、いくら内勤で来客が無いと言っても家族・友人と遊んでいるわけではありませんから、それなりに節度を持って装うことが大切だと思います。
スーツにネクタイでなくても、ジャケットにトラウザーズのセットアップスタイル、ジャケットの中にはワイシャツ或いは襟の付いているハイゲージのプルオーヴァー、冬ならタートルネックのニット。せめてこの程度の装いをして頂きたいと考えます。
ジャケットの中にTシャツは相応しくないでしょう。

ついでにワイシャツについて一言。もともとワイシャツは下着でした。ですからワイシャツ一枚で歩き回ることは下着であるいていることになります。下着なので本来はポケットもなかったはずです…などとそんなことまで言うつもりはありませんが、ボタンダウンの襟はアメリカのブルックスブラザーズ社が、ポロ競技の時に、襟が風でパタパタしないためにボタンで抑えることを考案した名残です。ブルックスブラザーズではいまだにボタンダウンとは言わずに、ポロカラーと言っています。ことほど左様に本来ならばボタンダウンのシャツにネクタイはしないものです。

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