銀座 高橋洋服店

Essay

第4回 オーヴァーコート考 2

2012.12.21

前回、「冬になったらオーヴァーコートを着ていただきたい」と書きました。

もう20年程前になるでしょうか、若者のトレンドでウールのコートが流行の兆しを見せて以来、徐々に大人のビジネスマンの間でもライナー付きの“スリーシーズン・コート”が影をひそめ、ウールのコートが着られるようになりました。大変結構なことだと、喜んだのも束の間、女性の間で人気が出始めていたダウン・コートが、瞬く間に男性の間でも大人気となり、ビジネスマンが通勤に着るようになりました。

ダウンのアウターは軽くて暖かいのが特長です。本来冬の登山やスキーなどのウィンター・スポーツ用として開発されたものが、時代の流れと共に女性のカジュアル・ウェアーとして着用されるようになり、更にはタウン・ウェアーに進出、そしてついに男性の通勤着として着用されるようになってしまいました。これではせっかく下火になってきた、スリーシーズン・コートの再来です。寒さが凌げれば何を着ていても良い、というのではドレス・コードの存在価値がありません。

カジュアル・ウェアーとしてのダウン・ジャケットやダウン・コート。良いと思います。軽いし暖かいです。ピー・コートやレザーのブルゾンと同じようにポロシャツやスェーター・スタイルにダウン・ジャケットやダウンのショートコートは良くマッチしています。ジャケットにトラウザーズといったセットアップ・スタイルならばダウンのショート・コートでも構わないと思います。しかしビジネス・スーツにダウン・コートはいかがなものでしょうか。ついでに書かせていただければ、いくらウールのコートといえども、スーツにピーコートやダッフル・コートもいただけません。もちろんジャケットにトラウザーズといったセットアップスタイルならば、まだ許容範囲でしょうか。

先ずコートの出自を考えてみなくてはなりません。そもそもダウン・ジャケットやダウン・コートがどのようにして生まれたかを考えれば、ビジネス・スーツに適したものではないことは、どなたでも理解できるのではないでしょうか。またピー・コートやダッフル・コートが、どのようにして誕生してきたものなのかを考えれば、同じ結果に至ると思います。

ライナー付きのスリーシーズン・コートが、冬のコートとして相応しくないのと同様に、いくら防寒着として優れていても、ビジネス・スーツの上にダウン・コートは止めるべきでしょう。

ではどんなコートがビジネス用のオーヴァーコートとして相応しいのか?それはなんといっても “ボックス・コート”と呼ばれるテーラード・カラーでセットイン・スリーブ、つまりスーツの上着の着丈が長くなったような形のコートが一番でしょう。色は、紺、チャコール・グレイ、或いは黒なら間違いありません。最近よく耳にする“チェスターフィールド・コート”は、ボックス・コートと同じような形で、よりタイト・フィッティングなコートのことで、本来はカジュアルな要素を一切排除したフォーマル・ウェアーのためのコートでしたが、ダーク・ラウンジ・スーツの上になら着用しても構わないと思います。ただし、ジャケット&トラウザーズのセットアップ・スタイルにはお召しになるべきではないでしょう。

そして最近ウールのコートであっても、クラシックな形でないオーヴァー・デザインのコートをしばしば見かけますが、あれもビジネス・スーツにはいかがなものでしょうか。

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