銀座 高橋洋服店

Essay

第50回 ちょっとした工夫で

2026.06.22

先日あるホテルのロビーで結婚式帰りの若者のグループに遭遇しました。全員引き出物の入った紙袋を手に持ち、二次会の会場に向かう途中だったのではないかと思われました。
女性は華やかなワンピース姿、髪の毛は奇麗な髪飾りとともにきちんとセットされて、いかにもパーティーに参加するような姿。男性陣はみなスーツ姿で、それなりにきちんとした服装をしたつもりだったのだと考えられます。
ただその着装法を見て、もうちょっと工夫をすれば、もっとちゃんと見えるのに、と余計なお世話の感想を持ってしまいました。
これは決して彼らの責任ではなく、ちゃんとしたスーツの着装法を教えてやれない大人の責任だと思いました。スーツとは何ぞや、どうやって着るものなのだという事を、一から教えてやらなくては、和服を着たことのない人に、突然和服を着てみなさいと言っても、どうして着ればいいのか分からないのと同じことだと思います。

そこで今回はスーツを着るにあたって、このポイントを守るだけでずっとちゃんときちんとして見えますよ、といういくつかのポイントを書いてみたいと思います。

これは若者に限ったことではなく、年齢に関係なくスーツを着用するすべての男性の基本の基のポイントと考えていただいて良いでしょう。

 

1 ネクタイはきちんと結んで、シッカリ襟元まで締め上げましょう。ネクタイは締めるものであって、ブラ下げるものではありません。ネクタイの結び目の上にワイシャツが見えるのは、だらしなくて見苦しいです。

2 ズボンの膝の辺りが赤ん坊の頭のように膨らんでしまっていたり(膝が出た状態と表現しますが)、膝の後ろが象の鼻のようにシワシワになってしまったりしている、手入れの行き届いていないズボンは見苦しいです。同時に、ズボンにはアイロンかけをして、前後にきちんと折り目をつけておきましょう。折り目の付いたズボンを履いているだけで、見た目が全く違います。

3 靴下とズボンの間から脛が見えないように注意しましょう。ソックスは十分に長さのあるもの、出来ればホーズ(日本ではハイソックス)と言われるひざ下まである長さの物が好ましいです。最近あろうことかスーツにスニーカーソックスを履いている若者が見かけますが、言葉を失います。

4 スーツには必ず革靴を履きましょう。どんなに高価な物でもスニーカーはNGです。革靴はきちんと手入れをして必ず磨いておきましょう。そして磨くときに踵の手入れも忘れずにしてください。泥がついていたり、すり減ってリフト部分がなくなってしまったような靴はNGです。

5 そして最後にスーツは流行に左右されない、オーセンティックなものをお薦めします。

 

先程遭遇した若者達が着用していたスーツは我々プロの目から見ると、何年頃に購入したものかお概ね見当がつきます。

ほとんどの既製品は流行を取り入れた、その時代に人気のあるモデルの洋服を販売しています。そうでないと毎年毎年売り上げを作らなくてはならないからです。今年はやりの洋服は、3年後には流行おくれの古臭い洋服になってしまうのです。そうでないと購買意欲が湧かないからです。

潤沢な資金があって、毎年毎年トップファッションの高級品を購入し続けることができればそれでもいいでしょうが、一応トップファッション風ではあるけれど、廉価な既製品しか手に入れられないというならば、イニシャルコストは多少かかっても、手入れをすれば長年着用可能な「流行に左右されないオーセンティックなスーツ」を購入される方が、結果的にはコストパフォーマンスは良いと言えましょう。

そもそもスーツに流行はない物なのですから。

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