第48回 Tシャツを考える
2025.08.26
今年は昭和100年。テレビ番組などでたびたび昭和の映像が流れます。そのたびに登場人物の服装の変化に驚かされます。
先日ある番組で昭和の休日に街を歩いている人々が映し出されている映像で、登場人物の服装で一番大きな違いは、という質問に答えた若者の回答が「みんな襟付きのシャツを着ている」というものでした。
私は全く気にも留めなかったのですが、いわゆるTシャツを着て歩いている人が見当たらなかったのです。昭和の時代は襟が付いていないTシャツは下着であるという考えで、下着で外出することはありませんでした。もちろんリゾートウェアとしてのTシャツは存在しましたが、タウンウェアとして、外出着としてのTシャツはほとんど認知されていなかったように記憶します。ましてTシャツでデートに出掛けるなどとは考えられなかった時代でした。
そんな考えを引きずって居るわけではありませんし、そのことと直接の関係があるかどうかは分かりません。ただ最近ファッション誌やテレビの出演者などの装いに頻繁に観られるジャケットの下にTシャツを着る発想が私はどうしても理解ができません。
そもそもジャケットには襟腰と言って首の左右から後ろ側の部分にかけて2.5cmほどの高さが設定されています。Tシャツにはそれが無いため、ジャケットが直接肌に触ってしまい肌の油で汚れてしまいますし、場合によっては襟が遠回りしてしまい見た目も良くありません。ネクタイを締めるような襟のシャツならばちゃんと襟腰がありますから、仮にノーネクタイで着用しても問題はありません。ジャケットを着用する場合は、ニットのシャツを着用するにしても襟があるようなものを着用すべきだと思います。
今でもエチケットに喧しい名門ゴルフコースでは、Tシャツでのプレイは許可されませんし、クラブハウスに入ることもできません。サッカーは昔からプレイをするときのジャージは襟無しの丸首だったようですが、ラグビーのジャージは最近でこそ襟のないものが主流になってしまいましたが、つい最近まで必ず襟が付いていました。紳士のスポーツと言われていた矜持だったのではないでしょうか。
全てにおいて略式 カジュアル化が進んでいる時代です。ジャケットの下に襟のないTシャツを着るのはおかしい、と私一人が腹を立てても仕方ないことだとは思いますが、洋服屋のオヤジとしては、どうしてもやっていただきたくない着装法の一つとして気になって仕方がないのです。