銀座 高橋洋服店

Essay

第34回 Ecology/Ethical/LOHAS

2022.05.09

Ecology/Ethical/LOHAS
追跡可能な服地(トレーサビリテイ)
環境に優しい洋服(サステイナブル クロージング)
投資に値する洋服(インヴェストメント クロージング)
本物の注文服はこれら全てを実現する

COVID-19の世界的な蔓延ですっかり世の中が変わってしまったような気がします。
ワクチン接種の普及で一見落ち着きを見せているようではありますが、これからはウィズ コロナの生活を余儀なくされることになるのでしょう。そのような世の中で脱炭素社会への取り組みがますます注目を浴びています。
真っ先にやり玉に挙がったのが化石燃料から出来る化学繊維を大量に使用して低賃金労働力を使い、低価格な商品を不必要に大量生産し、大量に売れ残った在庫は焼却処分するという行為を繰り返しているファストファッション業界でした。

本項の前々回(第32回)でも書かせていただきましたが、1990年代にはカジュアル服の生産はおよそ12億点、そしてシーズン中の販売(セールを含む)は約96%で僅か4%の売れ残りでした。それが2019年には総生産量は29億点に膨れ上がり、販売率は約47%、計算上は90年代の総生産量より多いものが売れ残り、焼却処分されているということになります。これを無駄と言わず何といえばいいのでしょうか?そして何よりも地球温暖化に悪影響を及ぼしていることは、日を見るより明らかです。
ちなみに90年頃の製品の50%は日本製。2019年ではわずかに3%だそうです。しかも安価なファストファッションのシェアが多くなったせいで平均価格は60%まで下落しています。(以上経産省の統計より)

ここ数年ビスポークブームと言われています。前回前々回でも書きましたが、現在のビスポークブームの根底にあるものは、企業が在庫を抱える負担を少なくするための方法の一つと言えると思います。
スーツやジャケット トラウザーズに関していえば、確かに注文生産ではありますが、その内容は既製品のパターンをそのまま流用して、僅かばかりのメジャメント変更・体型補正を加えたうえで、既製服縫製のラインに乗せて縫製を行う、お叱りを受けるのを覚悟で言い換えれば、いわば既製品の個別生産と言えましょう。
しかも価格を抑える為には相変わらず化石燃料を使用した化学繊維を多用せざるを得ません。
購入者は希望の服地を選択し、採寸してもらい、予め決められたいくつかのパターンの中から好みのディテールを選んで決められれば、それで十分ビスポーク 注文服と思ってしまうでしょう。
消費者受けするため今はやりのディテール シルエットが提案され、しかも廉価であれば流行を追いかけてしまうのは人の常。僅か数年で流行遅れになってしまった服は安易に廃棄されることになります。既製品と同じ縫製なので体形変化をフォローするための寸法直しが出来ません。
したがって体形が変わればやはり廃棄せざるを得ないのです。消費者を無視したただ単に生産者の都合だけの受注生産と言われても仕方ありません。これでは誰のためのビスポークなのか分かりません。
大袈裟に言えば、受注生産という言葉とともに、生産者も消費者も地球の環境破壊防止に歯止めをかけている振りをしているだけと言ったら言い過ぎでしょうか。
昨今の古着ブームで昔のデザインのカジュアルウェアーを扱うショップに人気が集まっているようです。
アパレルショップではリサイクルと称して古着を回収して別のショップで販売したり、日本から途上国に年間24万トンの古着が送られているとのことですが、世界的には衣料品全体の60%が廃棄されてしまっていて、寄付された衣服の半分以上が海の埋め立てに使われたり、捨てられてごみの山に成ったりというのが現状だと聞きました。

さて本題に戻ります。
以上のように地球環境破壊をなくそうという運動が盛んになり、ファストファッションへの批判の声が高まり、世界的にファストファッションに陰りが見え始めています。
さらに毎年新しいデザインを発表することによって、新しい流行を創造し続けているモード系ビッグブランドでさえ、衣服の陳腐化を助長するような「流行」という考え方を見直そう、という動きも見え始めているようです。
イタリアンやフレンチの食文化に象徴されるスローフーズに倣ってスローファッションと言う考え方が広がりつつあります。本物のビスポークはスローファッションそのもの言えましょう。

私共では、天然素材にこだわり化石燃料を使った化学繊維の使用を嫌い(エコロジー)、原毛の産地、紡績 紡織の工場にまで拘って(トレーサビリティー)素材を吟味して追跡可能な本物の服地選びを徹底しています。
縫製に関しては、ほぼ一人の技術者が一針ひと針縫い上げる丸縫い方式を堅持して丁寧に縫い上げる本物の洋服は、よほど大きな体形変化がない限り寸法調整も可能で、しかも流行に左右されないため10年お召しになることも可能な環境にやさしい服、つまりサステイナブルクロージングです。

世界では、手仕事、地域、環境、文化、遺産、革新、再生、保存というような概念を大切にしていこうとい方向に進んでいます。安価な服を次々に遣い捨てにする時代は終わりつつあります。高価であっても、製作者が明らかで、いつまでも陳腐化せずにお召しに成れる本物の注文服は、投資に値する服、つまりインヴェストメントクロージングと考えていただけると嬉しいです。
あえて大上段に構えてSDGsを考えた時、本物の注文服を着ることはエコでエシカルであり、LOHASを実践することになるのではないでしょうか?

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