銀座 高橋洋服店

Essay

第8回 クールビズを考える

2013.06.03

ゴールデンウィークが終わった5月7日、朝の通勤電車に乗ると、なんだかいつもと違った雰囲気を感じました。何となく朝の緊張感がないのです。一瞬「ゴールデンウィークに続けて未だ長期休暇中の人が多いのかな」と思ったのですが、それにしては子供連れは少ないし「ちょっと違う」 しばらく考えて原因は“クールビズ”であることに気が付きました。 4月中は曲がりなりにもスーツにネクタイ姿だったビジネス・マンが、一斉にノーネクタイ。更には相当数の人が上着を着ていませんでした。

2005年に始まったクールビズ。地球環境に優しくエコと言う面から考えればいいことに違いありませんが、しかし、ここまでドレス・コードが無視されてしまってもいいものなのでしょうか。快適に仕事が出来れば上着もネクタイも必要ないのでしょうか。

総ての服装の乱れの原因は、“その5”でも触れましたが、ネクタイを外し、上着を脱いだ後のドレス・コードを決めずにスタートさせてしまったことにあります。そして昨年から始まった“スーパークールビズ”に至っては、何をかいわんやです。遅ればせながら環境省が提案したドレス・コードもお粗末極まりないもので、何故クールビズでの着用は認められなくて、スーパークールビズなら着てもいいのか、意味不明のものがたくさん見られます。個々についてコメントをしているといくら紙幅があっても足りませんので、またの機会に譲りたいと思いますが、何か業界あげて正しい服装を提唱しなくてはいけないような気がします。

更に日本人はなぜ「○○でなければいけない」が好きなのでしょうか。「職場の室温が例え28度に設定されていたとしても、オレは仕事をする時はスーツにネクタイ」と言う考えが、認められない会社や職場が多いと聞きます。その人だけが乱れた服装で居るならば注意して改めさせるのが当然だと思いますが、本来ならばその方が正しい服装をしているにもかかわらず、わざわざ乱れた服装へレベルダウンを強要するのはいかがなものでしょうか。「上司がネクタイをしていると、部下が軽装になりにくいから」という場合は「オレに気にせず君たちは軽装で構わない」と一言言えば済むはずです。部下に軽装を強要する上司は、多分部下が自分よりキチンと見えるのが面白くないという嫉妬からなのか、はたまた服装というものが全く分かっていない、ただの「無知」かのいずれかではないでしょうか。

5月7日、ゴールデンウィーク明けに今年初めて遭遇したクールビズ。4月まではスーツにネクタイで何とか様になっていたビジネスマン諸氏が、突然ノーネクタイ、ノージャケットしかもオーヴァー・デザインのシャツで、収拾の取れない出で立ちになってしまった日は、寒いくらいの1日で、私はスーツに薄手のコートを羽織って通勤電車に乗っていました。

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