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Essay

第10回 クールビズを考える3

2013.07.15

スーパークールビズ真っ盛り。通勤電車の乗客の中にあたかも仕事をしている人は一人もいなくなってしまったかのような有様です。ビジネス・ウェアーとレジャー・ウェアーの境界がなくなってしまったのでしょうか。それとも人はビジネス・ウェアーとレジャー・ウェアーの区別ができなくなってしまったのでしょうか。

環境省が発表した「クールビズの服装の可否」という指針を見ると、何とも理解に苦しむことがたくさんあります。クールビズでは認められていないアロハシャツ、ポロシャツ、スニーカーがスーパークールビズでは認められています。アロハシャツを真似て作られたかりゆしシャツが、クールビズでも認められていながら、アロハシャツは何故スーパークールビズにならなければ着用できないのでしょうか。アロハシャツはかつてハワイに移民した日本人が考案したもので、現在ハワイではれっきとした正装です。一方ポロシャツはスポーツ・シャツの代表であり、スーパークールビズだからと言って、ビジネス・ウェアーとして認めるのは如何なものでしょうか。そして極め付けはスニーカーです。最近色々な製靴会社が出しているレザー・スニーカー。インター・ナショナル・ブランドが出している高額品も数多くありますが、あれはクールビズ期間中は認められないンでしょうかネ。クールビズ以外の期間にスーツの下に履いている人が沢山いるじゃないですか。第一スニーカーが革靴より涼しいという根拠はナンなのか教えてもらいたいものです。そしてサンダルはいずれの期間中も不可となっていますが、Web上ではクールビズに最適アイテムとして、最初から踵部分を踏んづけたように加工されたツッカケ靴―そもそも踵を踏んづけて靴を履くことそのものが論外ではありますが―が大人気だとか。これが良くって、何故サンダルがいけないのか。そうそう、区役所へ行くたびに、職員諸氏の執務中のサンダル履きに不愉快な思いをしたのは、私だけでしょうか。

かつて、クールビズでネクタイを外した感想を聞かれた内閣総理大臣が「楽ですね」と仰っていましたが、人は楽ならどんな格好で仕事をしてもいいのでしょうか。
先日北アイルランドで開催されたG8。各国の首脳がノーネクタイで会議に臨んでいましたが、あれは「ネクタイなしでリラックスして、胸襟を開いて話し合おうじゃないか」という趣旨の下ですから、クールビズとは根本的に異なったコンセプトです。6月の北アイルランドの気候を考えれば、「ネクタイをすると暑苦しい」はずがないくらいは容易に想像できると思います。

クールビズの考え方に反対するつもりはありません。しかし、ネクタイを外し上着を着なくなっても、もう少しまともな装いが出来るはずです。環境省の指針は論外としても、「デザインするメーカーもするメーカーですが、購入する消費者も消費者」といったおぞましいデザインのシャツや、「スーツを着てはいけない」「ネクタイを締めてはいけない」といった「真っ当な装い否定論」には憤りさえ感じます。

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