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Essay

第49回 Tシャツを考える2 -ジャ何を着ればいいのか-

2025.09.22

前回昨今のカジュアル化の中でジャケットの下にTシャツを着るのが流行っているが、私的には気に入らない…と書きました。
ではノーネクタイでジャケットを着用する場合、何を着用すればいいのか?
やはり相応しいのはワイシャツ型の襟腰があるシャツだと考えています。ただしいわゆるレギュラーポイントのシャツをネクタイを締めずに着用するのはお勧めしません。襟が倒れてしまって襟元がなんとなくだらしなく見えます。
そして序にもう一点。スーツ着用時のノーネクタイは私は絶対にNGだと考えています。なぜなら何らかの事情でスーツを着用したまま逮捕される時には、ネクタイとベルトを取られてしまいます。そんな姿が想像されるからです。

クールビズという奇妙なルールのもと「先ずはノーネクタイ」で、涼しく気楽な姿で快適に仕事をしよう、という事で推奨されたのでしょうが、それならなぜ「それでも一応はスーツは着ましょう」などというおかしなルールだけが残ったのでしょうか?
ジャケット&トラウザーズというセットアップスタイルは、ビジネスシーンにはカジュアルすぎて相応しくない、という発想らしいのですが、そちらの方がノーネクタイの場合は正しい装いなのですから、何故NGなのでしょうか。
今やビジネスマンの服装はもっと混乱してきて、年間を通じてノーネクタイが容認されていますし、お客様に対面することのない日にはスポーツシャツにチノパンツ、スニーカー通勤が許されているようです。クールビズにCOVID-19のパンデミックで在宅勤務が多くなったことが、トリガーになったようです。

クールビズに限らず、ビジネスウェアーのカジュアル化の悪口を書き始めると際限がないのでこの問題はこの位で切り上げて、本題です。
ではジャケットの下には何を着ればいいのか?
スーツの着用の場合は、とにかくネクタイを締めてください。
そして当たり前のワイシャツ。カラーのデザインは色々在ります。レギュラーポイント ワイドスプレッド ピンホール タブカラー等々。
最近なぜかボタンダウンカラーが大流行で、とにかく皆さんなぜかボタンダウンをお召しになっていますが、本当はスーツの下にボタンダウンは邪道です。
なぜならば、ボタンダウンシャツの起源は、アメリカのブルックス ブラザーズ社の創業者の孫 ジョン・E・ブルックスが英国でポロ競技を観戦した時に、選手のユニフォームの襟先が風にあおられてヒラヒラしてプレーの妨げにならないようにボタンで留められていたのを見て参考にしたのが起源だと言われています。ですからいわばスポーツウェアーの名残なのです。
ブルックス ブラザーズ社ではボタンダウンと言わず、いまだに「ポロカラーシャツ」と呼んでいます。その独特の襟先のロールが当時のアメリカの若者、特にアイヴィーリーガー達に支持されて、アイヴィースタイルの必需品になりましたが、それ以外のオーセンティックなスーツの下には決して相応しいものではないことを知っていて頂きたいと思います。
私の手元にある1970年代や1980年頃のアメリカ ブルックス ブラザーズのカタログを見ても、ボタンダウン ポロカラーのシャツは多くがブレザーやスポーツジャケットと組み合わされており、スーツの下に着用されたイラストはほとんど見当たりません。
ジョン F ケネディー第35代アメリカ大統領はアイヴィーーリーガーとして有名ですが、スーツ姿でボタンダウンのシャツを着用している写真は見当たりません。

それと私が理解できないことは、白いワイシャツのボタンの色を黒にしたり、ボタンホールの糸を黒くしたりすることです。カジュアルにお召しになるシャツならばいざ知らず、スーツの下のシャツの場合は是非止めていただきたいものです。
では、ノーネクタイでスポーツジャケットお召しになる場合はどのようなカラーのシャツが相応しいのか?
この場合はボタンダウンシャツが一番定番だと思います。弊社では他に襟先がワイドスプレッドより更に大きく開いたホリゾンタルカラーや、襟腰付のイタリアンカラーなども薦めしています。何なりとご相談ください。
最近あまり見かけなくなりましたが、以前襟が2枚付いているシャツがありました。何をかいわんやです。
もちろん秋から冬にかけてなら、タートルネックのニットなども素晴らしい着こなしだと思います。

最後にもう一点、最近カフスの内側に色違いのチェック柄の布を使ったり、カラーの内側の襟腰部分に表地よりも濃い色の布を使ったりしているデザインシャツを散見しますが、あれは首の汚れや手首の汚れを目立たなくして、洗濯の回数を減らす為の考案にしか見えないのは、私の考えすぎでしょうか。

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