第17回 どちらがフォーマル?どちらがカジュアル?(2)

バブル崩壊とともに姿を消した”ビッグ アンド ルース” スタイル。その特徴は上衣では、広い肩幅と襟巾、そしてタイト フィッティングのヒップ廻り。深いVゾーンを構成する極端に低い位置の二つボタン。トラウザーズは全体にルース フィッティングで、中にはスリー タックのモノまで出現するありさまでした。ビッグ アンド ルース スタイルの後にモード系のデザイナー レーベルに登場したのが三つボタンのスーツでした。全体にタイト フィッティングになり、三つボタン二つ掛けの浅いVゾーン、という設定が多かったようです。流行に敏感な若い人たちの間に瞬く間に広まりました。日本で三つボタンの背広を目にするのは、1960年代中頃にかけて一世を風靡したアメリカン・トラディショナル、いわゆるアイビーモデル以来であり、昔を知らない若者たちには三つボタンの復活は新鮮だったのではないかと思います。

既製の洋服がほとんどを占める日本では、二つボタンが主流の時に三つボタンの背広を探してもなかなか見つかりませんし、三つボタンに人気があるときに二つボタンを探すことは難しいと聞きます。しかし日本ほど流行に左右されることの少ないヨーロッパの男性の服装は、三つボタンと二つボタンが常に混在しているようです。特に英国では三つボタンには根強い人気があり、特にツイードのスポーツジャケットなどでは、もしかしたら三つボタンの方が多いのかも知れません。

基本的には、上衣のフロントボタンは少ないほどドレッシーつまりフォーマル。多いほどスポーティーつまりカジュアルと言われています。これは、ディナージャケットやモーニングコートのフロントボタンはすべて一つボタンであり、スポーツジャケットなどには三つボタンの方が多いということからも、推測できましょう。

一方袖口のボタンの数は、上衣の前ボタンとは逆に、数が多い方がドレッシーで数が少なくなるに従ってカジュアルだとされています。

ついでながら最近人気の本開き(“本切羽”とも言われ、見せ掛けだけではなく本当にボタンを掛けたり外したりできる袖口ボタンホールのことを称します)について一言。

英国では昔から袖口四個ボタン、三個ボタンの場合は袖口に近い二個を本開きに作り、残りはダミー仕上げ。袖口二個ボタンのスポーツジャケットの場合は、運動するときに本当に袖が捲り上げられるように(袖口ボタン二個の場合、伝統的にボタン間隔を少し離して付けるのが一般的で、その場合大体三個ボタンと同じくらいになる)二個共本開きにするのが通例です。イタリアでも伝統的には一番奥のボタンは閉じたままにするようです。最近既製服でも“本開き”仕様が出てきましたが、本格的な注文服と違って、既製服ではなかなかそこまで細かい仕様には対応できないため、すべて本開きにするか、すべてダミー仕立にするかのどちらかのようです。

 

パーマリンクをブックマーク

コメントは受け付けていません。