第12回 正しい寸法とは

今回は正しい寸法ということについて少し触れてみたいと思います。

服の大きさ・長さというものは「・・・でなければならない。」と言った決まりがあるわけではありませんが、「・・・ならば美しい。」「・・・では見苦しい。」「・・・では着心地が悪い。」という寸法があります。前回の肩幅とアームホールとの関係は最後の「・・・では着心地が悪い。」に属する例です。これと同じことが股上について言えるでしょう。腰骨の少し上、体の一番くびれた(必ずしもくびれていない人もいますが)部分でベルトを締めることによって、ズボンはしっかり支えられます。それより上にベルトがあれば、ズボンは下がってしまいますし、それより下ではウェスト寸法をよほどルースに設定しない限り、体の細い部分にせり上り、ズボンは股に食い込んでしまいます。

ズボンの股下寸法(長さ)は、靴の踵すれすれ。前は靴の甲に当たってやや大きめに折れる程度を標準としますが、裾口幅が広くなればそれよりわずかに長くなり、反対に裾口幅が狭くなれば、少し短く設定します。

つぎに上着の丈ですが、首の付け根のグリグリ(第7頚椎)から靴を履いて床までを測り、半分にして2センチ引きます。これを標準の上着丈と考えればいいでしょう。時代のトレンドで多少の前後はありますが、流行に左右されない正しい服を望むならば、この長さを基準にして僅かな調整をする程度です。よく「手の親指の爪迄」と言いますが、これでは腕の長さに左右されます。本来上着丈は身長を基準にすべきものですから、腕の長さに左右されるべきではないはず(もちろん多少の考慮はしますが・・・)です。しかしこれとて背中の丸い屈身体型、或いは胸の張った反身体型では加減しなくてはなりませんので、絶対的な基準には成り得ません。

ちなみに欧米人に比べ脚の短い日本人は、上着丈をやや長めに設定して、お尻を隠してしまったほうが、短足が目立たなくていいでしょう。

年配の方のほとんどが嫌うのが、「正しい袖丈」です。ジャケットの袖丈は、ほとんどの場合長すぎます。袖口からワイシャツが1センチ程度見えるようにするのが正規の長さなのですが、大体の場合、「ワイシャツが見えないように」という希望が出されます。しかもたいていの場合はワイシャツの裄も長すぎるので、上着の袖丈は相当長すぎることになってしまいます。上着の袖丈は是非とももう少し短くして、せめてワイシャツが少しでも顔を出す程度の長さで着ていただきたいものです。

そしてもう一ヶ所是非ともワイシャツを見せて頂きたい所があります。首廻りです。上着の上襟からワイシャツのカラーが1.5センチ程度出ることによって、スーツ姿はグッと引き締まります。

注文服をオーダーする場合は、自分のメジャメント(寸法)で型紙が作られますから、実際の寸法に希望を加味した長さや大きさの服ができあがります。しかし既製服を購入する場合は、自分の寸法に一番近いサイズの服に、修正を加えることになるわけです。

既製服購入の際のもっとも重要なファクターは、肩廻りの納まりと、ベルト位置、つまり股上です。上着を羽織ったときにジャケットが肩の稜線に自然に乗る感じで、肩の前の部分に圧迫感が無いこと大切です。また、ズボンの股上は適正でないとズボンが常にずり落ち気味であったり、尻縫い目が食い込んだりして不愉快です。そしてこの二つの部分は修正ができないことにも留意すべきです。その他のある程度寸法直しが可能部分でも当然限度があります。前回も書きましたが股下の長さや袖丈は、一見いかようにもなりそうなのですが、肘の位置や膝の位置まで修正してはくれないので、服のバランスを崩してしまうような極端なアジャストは避けなくてはなりません。

 

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